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Yersinia感染症
武田 修明
1
1倉敷中央病院小児科
pp.1168
発行日 1987年12月1日
Published Date 1987/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921869
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Yersinia感染症とは通常,Y.pseudotuberculosis(仮性結核菌,Y.pstb)とY.enterocolitica(腸炎エルシニア菌,Y.ent)による感染症を総称している.Yersiniaは従来,獣医学領域で哺乳動物などの病原菌として重要視されてきたが,わが国でも1972年頃よりヒトの病原菌として再認識されるようになり,人畜共通感染症として注目を集めている.このうちY.entは特に小児の胃腸炎の起炎菌として比較的多くの報告がみられるが,Y.pstbの報告は最近までまれであった.しかしここ数年,小児科領域を中心に,岡山や千葉などの集団発生も含めY.pstb感染症の報告が増加し,特に川崎病との関係や急性腎不全の合併などが注目されてきている.なお,第2次大戦後全国的に流行し,現在では幻の疾患とさえいわれた泉熱はY.pstb感染症であった可能性が強く示唆されている.
私どもが過去6年半に経験したY.pstb感染症は254例である(表).診断は糞便からの菌分離か,血清凝集素価の上昇に基づいた.大半が11月から5月にかけての比較的寒い時期に集中し,散発例は郊外に居住するものが多く,井戸水や山水の飲用歴が高頻度(80%)に認められた.
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