Senior Course 細菌
腸内細菌としてのYersinia属
橋本 雅一
1
1東京医歯大・微生物
pp.1054
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907763
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ペストの歴史は,Dionysiusがリビア,エジプトおよびシリァで流行したある恐しい伝染病を記載した紀元前3世紀にまでさかのぼることができるが,それ以後19世紀の後半まで,人類に対して非常な脅威を与えてきた.そして,その原因がペスト菌という小さな微生物であることが知られたのは1894年6月20日のことであって,その発見は当時ホンコンで流行したペストについて調査をすすめていたスイスの学者Alexander Yersinによって行なわれ,彼はこの菌をBacille de la Pesteと呼んでいた.
北里もまたペスト患者からその原因菌としてある微生物を見いだしたと報告したのは同じ年の7月7日のことであったが,北里の報告した菌はグラム陽性で,弱いが運動性を示すものであった.その後,Yersinが発見した菌に対しては,Pest bacillus,Bacterium Pestis,Bacillus Pestisなどと呼ばれたこともあったが,ここで注目したいのは1944年にすでにYersinia Pestisという名前が与えられていたことである(van Loghem).
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