ワードスキャン
ロイコトリエン
室田 誠逸
1
1東京医科歯科大学歯学部附属顎口腔総合研究施設
pp.1064
発行日 1987年11月1日
Published Date 1987/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921847
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ロイコトリエン(leukotriene:LT)は,喘息やアレルギー炎症を引き起こす原因物質と目されているもので,1979年スウェーデンのB. Samuelssonらによって発見された.LTは,その発見以来多くの科学者の興味と関心を呼び,熾烈な研究競争が展開されている.既にこれまでの研究によって,LTが心筋梗塞,肝障害,腎炎,消化管潰瘍,発癌,免疫不全などの病態にも広く関与していることが示唆されている.
LTは,その構造決定がなされるまでは,SRS-A(slowreacting substance of anaphylaxis)と呼ばれていた.SRS-Aの発見者はオーストラリアのW. FeldbergとC. H. Kellawayで,1938年のことである.彼らは卵アルブミンで感作したモルモットから肺を摘出し,それをin vitroで還流する実験系を用いて研究を行なっていた.還流液に抗原を添加すると肺でアナフィラキシー状態が惹起され,ヒスタミンをはじめとする種々のケミカルメディエータが産生,放出された,その中に,モルモットの摘出空腸をゆっくりと収縮させる未知の物質が含まれていた.そこでこの未知のケミカルメディエータはSRS-Aと呼ばれるようになり,その正体の究明が40年の長きにわたって行なわれたのである.
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