特集 疾病としてのアルコール依存症
回復はある アルコール中毒という病気
村田 由夫
1
1寿福祉センター
pp.530-535
発行日 1985年5月1日
Published Date 1985/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921079
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だらしのない人間,意志の弱い人間という誤った見方
大都市の中心地には必ずと言ってよいほど‘ドヤ街’と呼ばれている所が存在している.横浜市にも,寿地区簡易宿泊所街—通称‘寿ドヤ街’と呼ばれる—がある.ここには,港湾や土木建築の日雇い労働に従事する日雇い労働者とその家族約5800人が住んでいる.うち,単身の日雇い労働者は約3800人.
街を歩くと,酒を飲んで道路や職安広場に寝転んでいる人が目立つ.世間では日雇いになるような人は,人間的に弱点を持った人,怠け者,社会に不適応な人など,と思われ,そういう人が多い寿ドヤ街は,怖い街だと思い込んでいるようだ.また,日雇い労働者は酒を沢山飲む人たちで,アルコール中毒(以下、アル中毒と略す)になる人が多いと思われてもいる.なお,本稿では現在,医学の分野では使われることのなくなった,アルコール中毒という言葉をあえて使わせていただく.それは中毒者自らがそう呼んでいることと,彼らに対する偏見は名称を単に変えただけでは決してなくならないと考えるからである.
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