特集 失語症患者へのアプローチ
‘言語劇’について
手束 邦洋
1
1伊豆逓信病院第一理学診療科
pp.547-549
発行日 1982年5月1日
Published Date 1982/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919551
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慢性期に入り,リハ病院にやって来る失語症患者は,病棟でADLを習慣づけられることや,定期的なリハ訓練を受けることに対しては,何のためらいもなく受け入れ,可能な範囲のことはむしろ手固くこれらを行っていくので,間もなく1つの型を持った日常生活を形づくる.失語症患者に限らず一般のリハ患者においても,入院中の日常生活は,障害の多様性を別にすると,ともすれば画一化され,自動化されたものとなりがちで,その人固有の味わいが自然に発揮される余地は極めて少ない.
失語症患者にとりわけこの印象が深いのは,失語症という特殊な障害のゆえに,病前の多かれ少なかれ個性的であった日常生活が突然中断されたということのほかに,その日常生活の精神的裏づけとなっていた‘内心のつぶやき’の能力が,何らかの程度に障害されているからであり,失語症から‘治りたい’と希望する以外に,どんな新しい生活のスタイルを思い描くことも,彼らには困難になっているからである.
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