看護に生かす交流分析・1
交流分析理論の誕生
白井 幸子
1
1国立療養所多磨全生園
pp.701-704
発行日 1981年6月1日
Published Date 1981/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919270
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はじめに
私は数年前から2つの国立療養所で働いている.この2つの療養所は,それぞれ全く異なった病気を治療の対象とする施設であるが,共通している点は,どちらの療養所にも,回復の見込みのない慢性疾患で長期にわたる療養生活を余儀なくされている患者が多数いることであり,またどちらの療養所にも,看護上の独特な問題が存在していることである.
治癒の見込みのない病気で入院している患者においては,病気そのものとともに社会的問題,あるいは心理的問題が重要な位置を占めてくる.病気の前途に展望の持てないことからくる絶望感,長期にわたって家族と離れて生活することからくる孤独感,社会生活に参加できないことからくる焦燥感と劣等感などが相まって,患者に無数のストレスをもたらす.患者の不安な心理は,やがて医療スタッフにも影響を与え,両者のあいだに緊張感が生まれる.
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