プロフィル
—宮下忠子—彼らの前だと自分の虚飾がはぎとられますね—健康を害した山谷の人々の医療相談員として5年
吉
pp.1329
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918845
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陽が一度もさしたことのない部屋。湿ったよどんだ空気。ほとんど干したことのないような布団。冷暖房はなく、夏はうだるほど暑く、冬は凍えるほど寒い。蚕棚のようなベッド。ナイチンゲールが『看護覚え書」の中で書いた十九世紀の英国とほとんど変わらないような住居の中に山谷の労働者は住む。
「健康な人でさえ何年もいれば、これじゃ体を悪くしますね。この夏こんなことがありました。重症結核のオジイちゃんがいた。かろうじてドヤ(宿屋)に泊まっていたが、訪問すると焼けつくようにムッとする暑さ。オジイちゃんが寝ていたのは六人部屋で蚕棚の一番下。ひどい排菌状態だけど、部屋の若い人は働き疲れて寝ている。もし栄養状態が悪ければ飛抹感染ですぐ伝染する条件が立派にととのっている。もうゾッとしました。そういうケースは案外多いんです
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