特集 患者・家族からの発言
もおぅ〜,早く治りたぁ〜い!—筋無力症のTさんからの聞き書き
滝口 MAKO
,
川村 佐和子
1
1東京都立府中病院医療相談室
pp.1061-1067
発行日 1979年10月1日
Published Date 1979/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918792
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
滝口 MAKOさんに会ったのはもう8年も前のことになる.府中病院神経内科外来が開始されて間もなく,彼女は‘あたしの先生—むずかしく言うと主治医ね,彼がここに転勤するって言うから,来てみたのよ’というようなきっかけで,外来に現れた.細い,小柄な四肢.をダラリとさせて,下顎を手で押し上げるように支えながら,時々は小鳥のように首をもたげて唾液をのどの奥まで流しこんでいた.
あのころのMAKOさんは,今思えば元気であった.おしゃべりを始めると,‘病気のせいで舌の回りが悪いのよ’と言いながらも,早口でよくしゃべった.一通り身の上話が済んだとき,彼女は‘アメリカに行きたいのよ’と言いだした.‘あっちにはいい薬がないものかなあ’と言う.回復のためには地の果てまでだって行っちゃうという気持ちが,切々と伝わってくる気魄であった.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.