特別記事
会津の取り上げ婆さま—相原イクノさん聞き書き
小林 康乃
1
1中嶋助産院
pp.1028-1034
発行日 1990年12月25日
Published Date 1990/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903261
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
相原イクノさんは,通称“イクばあちゃん”と呼ばれている。私が物心がついた頃,開業助産婦である母が幾度となく“イクばあちゃん”という言葉を口にしていた記憶があり,長じて初めてイクばあちゃんに会った時は「あの有名なイクばあちゃんってこの人なのか」と感動したことを覚えている。生地である福島県田島に疎開し開業した私の母は,助産婦という資格があるものの,実際にはこの資格をもたないイクばあちゃんに取り上げを頼むこともあり,証明だけの助産婦に甘んじていた時代があった。イクばあちゃんは今も健在であり,部落で妊婦のお産が始まった時には入院時期を適切に指導してくれる。助産婦になろうなどとは全く思っていなかった私が助産婦になり,今こうしてイクばあちゃんの半生を記すことになった。あの初めて会った日の感動は,今日という日を予期してのことであったに違いない。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.