特集 看護の現場を問い直す
看護を超えて
谷中 輝雄
1
,
田口 義子
1
1やどかりの里
pp.810-815
発行日 1979年8月1日
Published Date 1979/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918738
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はじめに
‘やどかりの里’の日常の営みのなかから,精神科看護を問うてほしいとの依頼は,我々に幾つかの危惧をもたらした.1つは‘やどかりの里’の場は地域社会そのものであることから,精神病棟とは隔たったものであると片づけられてしまうことへの危惧.もう1つは,‘やどかりの里’のかかわりは,地域でやっているからには軽度の精神障害者に通用する事柄であろうと推測し,日常精神病棟でみている患者は,社会復帰への望みもない,どうしようもない人たちだから対象が異なるとして,振り返ってもらえないのではないかとの危惧.あるいは,‘やどかりの里’のスタッフだからできたのであって,それは特別なことなのだと羨望(せんぼう)のまなざしで遠くから眺め,それで終わってしまうであろうとする危惧である.
これらの危惧は,我々が実践報告をするたびに寄せられた感想であるからして,今ここでも躊躇(ちゅうちょ)せざるをえないのである.
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