特集 自分の死を知った患者への援助
死が日常的に語られる場で
後藤 直美
1
1神奈川県立成人病センター
pp.263-267
発行日 1978年3月1日
Published Date 1978/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918344
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鎮痛剤とKさん
家族のために生きているKさん
進行性胃癌の末期で,腫瘤が腹部全域に転移した23歳のKさん(女性)の5回目の入院は,すでに退院の見通しのない入院でした.2週間が過ぎても苦痛はいっこうに軽減されず,彼女自身焦慮の中で,無論‘死の宣告’はされていなかったのですが,漠然とではあっても死を間近に迫ったものとして感得できていたのかもしれません.その時どきの治療や鎮痛剤に期待した効果が現れず,止むことのない疼痛や嘔吐,通過障害による腹部の膨満感のなかでの失意がこう言わせるのでしょう.
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