特集 医療過誤を防ごう
新宿赤十字産院乳児結核事件の教訓
島木 一平
pp.15-20
発行日 1969年5月1日
Published Date 1969/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917585
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はじめに
乳児の集団結核事件,それは当時,新聞やテレビでかなり大きくとりあげられ,院内感染の問題がクローズアップされたので,“ああそんな事件があった”とおぼえておられる方もあると思う。しかし,あれから丸3年以上を経た今,もしそのことを耳にすることがあっても,すでにその問題は片づいてしまったと思う方々も多いことであろう。
私自身,あの時のことをふりかえってみると,ある産院でおこった一つの事件として,傍観者の立場でこれをとらえ,職業柄,ふつうの人々よりもやや丹念に記事に目を通したにすぎなかった。しかも結核に罹患した乳児の将来や家族の人々の気持を察するよりも,“新宿産院の当事者の方々はたいへんだろうなあ,こんなに騒がれて…”と思ったほどである。そしてむしろ,日常経験したり,耳にする大小さまざまなミスや医療事故をふりかえって,マスコミに取りあげられた新宿産院は運がわるかったのだというような受け止め方さえしたのであった。おそらく,“うちじゃなくてよかった”と胸をなでおろした方もあったのではないだろうか。
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