特集 意識障害患者へのアプローチ—東京看護学セミナー第10回公開セミナーから
意識障害とは何か—北大看護チームの報告を読んで
千葉 康則
1
1法政大学
pp.130-132
発行日 1975年2月1日
Published Date 1975/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917179
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私は脳生理学を専攻しているのだが,たいへん面白い人間の側面をみることが多い.つまり,哲学や文学に造詣が深く,人間や社会について語るときにはかなり高度で複雑な論議をする入が,あるときに急に単純になるのである.たとえば,脳の重さやしわの深さが頭のよしあしを決定しているというような脳生理学的(?)な話を聞くと,そういう話を意外に簡単に信じこんでしまうのである.あるいは‘自分の子どもの頭をよくするにはどうしたらいいか’というような脳生理学的知恵を求めようとする.そういうときに,彼らは‘頭のよさとはなにか’とか‘人間は頭がいい方がすぐれているのか’などということを考えてみようともしない.
それにはいろいろの理由があるのだろうが,自然科学に対して弱いというのがひとつの理由と思われる。一般論としては,科学に対してはどちらかという批判的な人が多い,私たちが人間を科学的にとらえようとするのは単純すぎると批判したりする.そのくせ,具体的な科学的知見に対しては弱いのである.病気になると,科学の発明品であるところの薬を盲信したりするのもそういう人たちである.
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