2色ページ 人類遺伝学へのさそい・3
染色体のはなし(3)—染色体異常の成因
山田 清美
1
1東京医科歯科大学遺伝病研究施設
pp.344-347
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916974
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染色体異常と染色体不分離
染色体異常の中で,モノソミーやトリソミーなどの数的な異常は,細胞学的には細胞分裂の際の染色体不分離の現象による.ダウン症児をもつ家系や近親婚などにおける遺伝学的な解析から,この染色体不分離は遺伝子の支配によって起こるものではなくて,全く偶発的に一定の確率で起こる突然変異によるという考えが支持されている.
染色体異常個体は,人種差,地域,時代を問わずに,大体一定した頻度で出現することは,その原因を解明する上に重要なことである.これまでいろいろな要因について解析されたが,その中で疫学的研究によって明らかにされた唯一つのことは,21トリソミー型のダウン症やXXY型のクラインフェルター症などのトリソミー個体は,母年齢が高くなるにつれて出現頻度が高くなるということである.このことは,母親側の配偶子形成過程において,年齢が高くなるにつれて染色体不分離を誘発する因子が蓄積されることを意味している.しかし,それらの疾患の中にも,母年齢に依存しないで出現するグループが存在することや,性染色体異常の中には明らかに父親側に原因があるタイプも多く知られているので,染色体不分離は母親側にのみ起こっているわけではない.
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