疾病の病態生理—最近の考え方・2
心臓弁膜症
林 隆一
1
1大阪大学医学部第1内科
pp.254-257
発行日 1972年2月1日
Published Date 1972/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916895
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はじめに
心臓弁膜症は器質的心疾患の30〜40%を占め,その原因としては,過去においては心臓弁膜症がリウマチ性疾患と同義語として使用されていたくらいリウマチ性のものが圧倒的に多かった.現在でもリウマチ熱の後遺症として発生するものが大部分であることには変わりないが,梅毒性,細菌性,動脈硬化性,先天性のものの比率が,とくにわが国を含めた先進諸国においてしだいに増加してきている.
一般に,リウマチ性弁膜症はリウマチ性心内膜炎における弁膜炎が治癒したのち,そこが瘢痕化し,肥厚,硬化,癒着,萎縮などを来たして弁膜にいろいろの変形を生じたためと考えられている.はなはだしい場合は,弁全体がほとんど癒着してわずかに小孔を残すのみのことがあり,経過の長いものでは石灰の沈着さえみるものもある.リウマチ性心内膜炎では主に僧帽弁が侵され,ときに大動脈弁やその他の弁の病変を合併するが,僧帽弁以外の弁膜が単独に侵されることはほとんど稀であるところから,弁膜症でも僧帽弁疾患が最も多く(50〜70%),大動脈弁(10〜20%)および両者の合併(10〜30%)がこれに次ぎ,三尖弁の侵襲は剖検上では少なくないが,臨床症状として発見されることは肺動脈弁の障害と同様きわめて稀である.
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