2色ページ ライフサイエンス入門・5
精神医学からみた生命
小見山 実
1
1電気通信大学保健センター
pp.624-626
発行日 1973年5月1日
Published Date 1973/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916651
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人間としての生命
いまここにひとりの患者がベッドに横たわっているとしよう.彼は脳血管障害のため,すでに数日間,意識を喪失したままである.彼の生命は蘇生術やその他の医学的処置によつて維持されている.この患者はまだたしかに生きているし,またもとのように回復するかもしれない.
しかし,たとえば彼を見舞いに来た友人はふとこんなことを考えないだろうか.‘彼は本当に生きているのだろうか’と.なぜなら,彼は友人の方を向いて笑いかけたり,話しかけたりしないし,また話しかけても答えが返ってこないからである.もちろん彼が回復すれば話は別だが,少なくともいまの状態では,友人の眼前にあるのはただ植物的に生きている彼の肉体だけであって,人格としての彼ではない.
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