リハビリテーション看護を考える・10
トランスファー・テクニック
上田 敏
1
1東大病院リハビリテーション部
pp.1482-1484
発行日 1972年11月1日
Published Date 1972/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916495
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ベッドから車椅子へ
坐位の耐久性がついてきて,ある程度に達したら,ベッドの上で坐るだけでなく,車椅子に坐らせたほうがよい.‘どこで坐ったって同じことじゃないだろうか?’と思われるかもしれない.しかし,それが違うのである.病室の構造(とベッドの位置)によってはベッドの上に坐っただけで窓の外がひろく見渡せる場合もあるかもしれない.しかしふつうはそれほど視界は広くない.やはり車椅子に乗って,窓ぎわにつれていってもらったり,廊下の先の見晴しや日当りのいいところにつれて行ってもらって初めて外の世界が患者の目の前にひらけるのである.
これまでベッドとその周囲だけに限られていた視界が,車椅子に乗ったことで急に広がるということは小さいことのようだが,患者にとっては自分がベッドから広い世界に一歩ふみだしたことを具体的に実感することにほかならない.‘こんな片輪になってしまって死んだほうがましだ,と言い暮らしていた患者が,車椅子で動き回るようになってからぱったりとそんなことを言わなくなった例もある.こんなところにもモチベーション(動機づけ,意欲)のきっかけはひそんでいるのである.
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