看護のための集団力学入門・7
変化に対する抵抗とその克服
岡堂 哲雄
1
1聖路加看護大学
pp.1348-1355
発行日 1972年10月1日
Published Date 1972/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916467
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保守性の効用と論理
どのような集団においても,そこになんらかの変革が試みられると,必ずそれに対する抵抗があらわれる.集団や社会のさまざまな日常習慣を改めたり,労働のしくみや組織体の構造を改革しようとすると,多少とも反対の意向が表明されることは,誰でも知っている社会的現象である.たとえば,労働大臣によって主張された勤労者の週休2日制の導入に対する反対意見は新聞の投書らんをにぎやかにしたし,学校教育における週休2日制を目ざす日本教職員組合のアッピールは多くの母親たちの賛成をうるにいたっていない.母親たちにとって,子どもたちが1週間に2日も在宅してはうるさくてたいへんだという気持ちと,今でさえ学習塾に通わせることで文部省のきめた学習目標にやっと追いつかせているのに,週休2日ともなると,もっとおくれるのではないかという心配が大きいために,ほかの文明国ではあたりまえの学校教育における週休2日制が積極的に受けいれられないのだと言われている.
この通学日数の問題に限らず,日常生活は一定の習慣やしきたりによって営まれている.そのしきたりに反することを求められると,誰でも不安になり,抵抗を示すようになる.たとえば,小学生のランドセル通学は子どもの発育促進や交通事故防止のために廃止すべきだという進歩的な意見をもつ校長や教師は,ランドセル鞄屋の回しものでは決してない母親たちに嫌われるという.
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