抵抗の女(ひと)・イーディス・キャベル
つつましく静かに看護の道へ
高見 安規子
1
1東大看護学校
pp.48-51
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916054
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イーディスが家庭教師として自活の第一歩を踏みだしたのは,エセックス州のある牧師の家庭でであった。しかし,しばらくして親戚から少しばかりの遺産を譲られたので,以前から望んでいた外国旅行をするため,その職をやめた。父は,かつてそのような金を牧師館を建てるために費したのだったが,イーディスは,自分の見聞を広めるために使いたいと思った。当時イギリスでは,ちょうど今の日本のように,外国旅行の楽しみが上流階級の者ばかりでなく,つつましい人びとにまで味わえるようになってきていたから,イーディスの企ても,知識欲旺盛な娘にとって当然のことだった。
イーディスは23歳の夏を大陸で過ごした。そして彼女の心に一番強く残ったのは,パリの華やかさや,ローマの遺跡ではなく,バヴァリア地方を旅行したおり訪ねたヴォルフェンベルク博士という医師の病院だった。彼女はその病院のために心ばかりの寄附をしたという。
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