医学講座
白内障
増田 義哉
1
1久留米大学医学部眼科
pp.73-80
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915057
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I.まえがき
白内障は俗に「白そこひ」ともいわれ,一般に水晶体(レンズ)の混濁している状態に対して名づけられた診断名であって,透明であるべき水晶体が少しでも濁っていれば,白内障と診断して誤りはない。しかし散瞳して,細隙灯顕微鏡で検査して,水晶体に点状の混濁をみつけたからといって,それをただちに白内障であるということを患者に告げるのは,慎重でなければならない。というのは,さらぬだに神経質の患者は,「そこひ」と聞いただけで,失明するのではないかと心配して,なおさらノイローゼになるおそれがあるからである。このようなノイローゼはやはり医師の不注意な発言によっておこる一種の医原性疾患であると思う。また白内障(白そこひ)と緑内障(あおそこひ)をよく混同する人があるが,同じ「そこひ」であっても,全然異なる病気であって,白内障は一般に予後がよいが,緑内障は眼圧があがり,神経が萎縮してきて失明する予後の悪い病気であることを老婆心ながらつけ加えておく。
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