研究レポート
大学病院における治療的共同社会の試み—第1報 共同社会における看護婦の役割
中久喜 雅文
1
,
大山 好子
,
神宮司 英子
,
藤明 朱美
,
上原 和江
1東京大学医学部付属病院精神神経科
pp.39-48
発行日 1970年2月1日
Published Date 1970/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914769
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1.まえがき
私たちの病棟では,昭和41年9月以来,入院患者に対して治療的共同社会の理念を応用した生活療法を行なっている。現在の安定した診療体制ができあがるまでにはいろいろと試行錯誤が行なわれたが,看護婦もこの病棟変革の過程に伴って,看護婦としての役割の再検討を余儀なくされた。従来わたくしたちの病棟においては医師と患者とのつながりが強すぎ,そのために看護婦はその関係からはみ出し,ただ医師の指示に従って動くという従属的な役割しか果たしていなかった。とくに精神療法を強力にうけている患者の治療においては,看護活動は治療に対する有害な干渉とみられる場合もあった。ところが治療的共同社会のなかでは看護婦も主体的,積極的に治療に参加することが要請される。この診療体制が実施されるにつれ,看護婦に治療チームのなかでは生活療法家としての積極的な役割をになうようになってきた。
このように,看護婦の受身的役割から積極的役割への転換は,そう容易に行なわれるものではない。ことに長期間古い看護体制に慣れ親しんできた一部の看護婦にとって,これは苦痛を伴う体験であった。しかし看護体制の形式のうえでも,また看護婦の意識のレベルでも,徐々にではあるが変革がすすみ,現在の比較的安定した状態がもたらされたのである。
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