医学と看護
夏に多い小児の疾患
塚田 忠弘
1
1新潟大学医学部小児科学
pp.75-79
発行日 1969年8月1日
Published Date 1969/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914576
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はじめに
戦前においては,小児の疾患として夏は消化器疾患,冬は呼吸器疾患が代表的なものとされ,これらが小児死亡の主因をなしていた。しかし,今日では,かつて夏季に多発した消化不良症,疫痢は激減し,その季節発生の特異性は失われてきている。最近3年間の入院患児について調査した結果でも,表1のように,疫痢,赤痢はほとんどなく,消化不良症は夏季よりもむしろ冬季に多いという結果が得られた。これに対して無菌性髄膜炎が夏季に多く発生しているのが注目される。冬季にはやはり肺炎が多くみられている。
夏季には一般に糞便の媒介する感染症が流行しやすいが,抗生物質の出現により,赤痢,チフスなどの細菌性疾患は減少し,今日では種々のウイルス,特に腸管系ウイルスによるいわゆる夏かぜ,あるいは無菌性髄膜炎などが流行の主役をなしている。この他,数はそれほど多くはないが,その重症度から注目されるのが日本脳炎である。一方感染症とは別に,夏季における小児特有の疾患として夏季熱が知られている。最近は,生活環境の改善により減少してきているとはいうが,なお時々みられ,感染症と誤まられて治療されている場合があるので念頭におくべき疾患と思われる。以下,夏季に流行する主なウィルス性疾患および夏季熱についてその概略を述べる。
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