医学と看護
肝硬変症
井垣 章世
1
1高松赤十字病院消化器科
pp.73-77
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914541
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
Spellbergによれば肝硬変症(Liver cirrhosis)のCirrhosisと言う言葉は,ギリシャ語の“Kirrhos”-オレンジとか黄褐色を意味し,病肝の色に由来したものであるが,むしろ“Skiros”-硬いと言うギリシャ語からくるScirrhousを用いてLiver scirrhosisと言う方が妥当であると述べている。すなわち肝硬変症とは多くのいろいろな病因て肝臓が変性硬化を繰り返し,その硬くなった肝臓によってひきおこされる一定の症状に対して命名された疾患名である。
かって病理学者が診断した剖見肝では,ほとんどが肝硬変の終末像と言われるレンネック型輪状肝硬変の像であった。その後肝疾患に対する研究,肝機能検査の進歩,特に肝生検の普及と腹腔鏡検査の導入によって,代償期すなわち早期の肝硬変が診断されるようになった。その際肝の組織所見が重要な診断的役割を果たしたわけであるが,当然の事ながら初期の肝硬変組織像と前硬変期と称する肝硬変以前の組織像すなわち慢性肝炎,肝線維症および肝脂肪変性などのものとの間にきわめてまぎらわしい例がたくさん見られるようになった。では形態学上どんなものから肝硬変と呼ぶべきか,日本肝硬変症分類研究班が定めた基準によると,1.肉眼的に結節形成があること
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.