文学
伝説とガンと—円地文子の小町変相
平山 城児
1
1立教大学文学部
pp.106-107
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913792
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今年は,多くの作家がつぎつぎとなくなってゆく。梅崎春生,江戸川乱歩,谷崎潤一郎,そして,高見順。昭和が40年にもなり,戦後20年もたったということを,文学の面から見ても,つくづくと考えさせられる年である。
高見順の死因はガンであった。ちょうど池田元首相の,これもガンによる死と前後し,ジャーナリズムも派手にとり上げたせいもあるが,文学に無縁の人たちまで,ガンの恐しさを,改めて身にしみて感じたことだろう。そういえば,室生犀星も,外村繁も,その夫人も,それぞれ,ガンでなくなった。恐しいことである。外村繁の,ほとんど遺稿に近い作品「落日の光景」には,凄惨な感じまでする,ガンの治療風景が描かれている。
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