ナースひとり世界を行く・6
美しくのどかなスペインの街
菅 和子
1
1東京女子医大付属病院
pp.92-93
発行日 1967年9月1日
Published Date 1967/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913292
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荘厳なる大寺院と歴史のアルハンブラ宮殿
セビリア(Sevelea)は4月に来たときは,伊予柑に似たオレンジ,マンサーナの木に白い花(ジャスミンの原料)が咲いていたが,9月には大きな実がすずなりだった。白い花を恋人が髪につけてあげている姿をよく見かけ,ひとりで歩くことに必要以上の腹立たしさをおぼえたものだが,秋に行ったときは,子どもが木に登ってオレンジをもぎとり,おまわりさんに説教されている姿などが見られ,なんとも楽しいものだった。そして二人でその実を分けあって食べているのだから,まったくのどかである。
ここには大カテドラルがあり,宗教的な宝庫でもある。朝6時に始まる日曜日のミサの壮厳なこと,天をつくように高い天井は聖歌が反響して,まるで天使の声を聞くようだ。教会の鐘は32鐘つらねて音を出すみごとな音楽である。このカテドラルの中で最も心を奪われたものは「涙のエスペランサ」という像だった。女の涙はこんなにすばらしいものなのだろうか。人間は罪深きものといったことが心痛いまでにわかるような気持になる。このマリアの涙はダイヤモンドと水晶でできており,それらの装飾品の数々は1か月に1度変わるのだという。宝石のみごとさとその数の多さに驚いた。
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