音樂の旅(3)
さよならスペイン
山本 金雄
pp.49-51
発行日 1954年4月10日
Published Date 1954/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200721
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いよいよ音樂の旅も,さわやかな4月の空をきつて,大変快適なスペインへと向つております.
高度2万呎,フランスとの国境ピレネー山脈を越えてスペインの中央カスティル高原へと空の旅をしておりますが,このピレネー山脈は,ちようどヨーロツパとのカーテンのようた感じに高く聳え,ヨーロツパと隔てられた壁になつており音樂の方もヨーロツパ的な音樂とは違うスペイン独特の音樂を持つております.スペイン民謠として有名なものに「ラ・パロマ」「追憶」「ワニータ」等がある.スペインは古くから,マウル人其の他東洋民族と接触した関係から,旋律の上からも又音階の上からも,ヨーロツパ的であるよりはむしろ多分に東洋風である.東洋風な装飾音符を好むと同時に,スペイン特有の踊りのリズムを持つている.ラ・パロマは「ハバネラ」のリズムを持つた情熱的な民謠で,旅に出る愛人に歌う戀愛歌で「あなたの室の窓に小さな鳩が来たらどうぞ私だと思つて可愛がつて下さい」という意味の歌詞である.南米民謠「アイ・アイ・アイ」はスペインに流行し,あたかもスペイン民謠であるかのようであるのは,スペインと中南米は切つても切れぬ関係にあり,スペイン民謠は中南民謠の如く流行している.
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