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街から村から
実波 昌子
pp.62-63
発行日 1952年10月1日
Published Date 1952/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200205
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残暑もきびしい或る夕方,私は仕事の帰り道,家へ向つての街をゆつくりペタルを踏んでいた。車道と歩道の区別のない比較的にせまい道であるが,この街の主な通りの一つで,駅がら眞直続いている。自転庫から降りて,半ば楽しみながら紫色のそしてたそがれの活気に満ちた店々を見て廻る
自転車がガタンと何かにぶつかつてぽーつとしていた私は,はつとして,前を見た。顔を眞赤にした40がらみの中肉中背の男が自転車の前輪を両手でつかんで,何か云つている。
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