医学と看護7月のテーマ
心筋硬塞
新谷 博一
1
1昭和大学医学部・第三内科
pp.51-55
発行日 1967年7月1日
Published Date 1967/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913210
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はじめに──心筋硬塞の頻度
最近,新聞の死亡通知や名士の死亡記事をみていると,心筋硬塞症で死亡したというのが非常にふえているような印象を受ける。これはこの病気に関心をもっている私の眼には,他の人より特別に入るのだろうか。わが国のこの方面の信頼できる統計でもこの事実が認められている。図1は文部省科学研究費綜合研究の「心筋硬塞」研究班(班長東大上田英雄教授)で御参加の大学の内科教室の入院患者について調べ集計した,入院患者中に占める心筋硬塞患者の割合の年次別頻度である。破線より以前の頻度は10年以上前にやはり文部省科学研究「冠循環」研究班(班長東大沖中教授)でまとめられた成績で,それにつづけたのであるが,1951年(昭和26年)頃から心筋硬塞の頻度がかなり増しており,昭和25年(1950)にくらべると,昭和36,37年(1961〜1962)には3〜4倍になっていることがわかる。これは医学の進歩によって診断される率が増した点もあずかっているかもしれないが,そればかりでないことは剖検例についての統計からも明らかである。わが国には日本病理剖検輯報といって,日本全国の剖検例を網罹した年報が数年前から日本病理学会の努力で出されている。
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