医学と看護6月のテーマ
心臓手術の合併症
服部 淳
1,2
1関東逓信病院呼吸器科
2東京女子医大(外科)
pp.54-58
発行日 1967年6月1日
Published Date 1967/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913175
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心臓の手術には常に危険が伴う。過去10数年にわたる心臓外科医の苦心は,いかにしてこの危険を少なくし多くの患者を救うかにかかっていた。心臓手術の予後を決定する因子は,1)手術適応の決定 2)術中の諸問題 3)術後管理である。このうち 1)の手術適応についてはすぐれた機械が数多くうまれ,心臓カテーテル,心臓血管造影その他心臓の生検に至るまでかなり広く安全に行なわれるようになった。その結果現在では手術適応の判定の誤りはなくなってきている。しかし安全適応を越えた患者の手術も行なわざるを得ない場合もある。さらに術中の諸問題も人工心肺装置をはじめとして,装置にも手技の上でもほぼ確立されたと見てもよい段階に至っている。これらに対し術後管理についてはRecovery room,lntensive Care Uniteへと体制は進歩をみたが,症状の変化を発見する鍵となる計測は主に医師および看護婦の経験によって行なわれている。一方手術の適応が拡大されファロー四徴根治術から先天性・後天性弁膜障害に対して人工弁移植手術など長時間体外循環が行なわれるようになると,従来の心手術後に見られた合併症以外にも体外循環後の症候が問題を提起し,しかもこれらの合併症はきわめて重篤であるために,治療が症状の進行に対して後手にまわったらなかなか回復することが困難となる。
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