看護の潮 看護学形成への探求
私の看護を豊かにした本
童話と小児看護
吉武 香代子
1
1病院管理研究所
pp.40-42
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913032
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子どもの詩の世界
私が子どもに対して特別の関心を示しはじめたのは,決して遠い昔のことではない。その変化は少なくとも看護学院入学前のことではなかった。看護学生だったころ,小児病室での深夜勤実習で私は子どもたちの安らかな寝息を聞き,その安らかな寝顔を見た。そして私は,はじめて子どもを愛することを知り,看護を職業とすることへの迷いを捨てた。やがて卒業した私は,当時まだ村と呼ばれていた郊外の小児専門の結核療養所に勤務した。
私にとって,子どもを愛することと,看護の職業を愛することとは一体であった。すでに,再び子ども相手以外の看護には従事しないことを何の疑いもなく信じていた。松林に囲まれた子どもたちの楽園は,忙しかったけれど平和であった。総合病院に勤務しているクラスメートが,注射と処置に明け暮れることを余儀なくされていたころ,子どもたちを人間としてみつめることを学び得たことは,私にとって大きなプラスであった。まだ「患者中心の看護」とか「心を看護する」とかいう言葉を聞かない時代だった。
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