ナースのための臨床薬理
薬物療法における暗示,偽薬Placeboの効果
橘 敏也
1
1聖路加国際病院内科
pp.4
発行日 1966年9月1日
Published Date 1966/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912857
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薬理効果の点で人間が実験動物と一番ちがっている点は,人間の場合薬物自体の薬理作用のほかに精神作用が加わることである。すなわちひとに薬物を投与したときの効果は,薬物自体の薬理効果にαが加わることで,このαは,薬物を投与されるときに患者が受ける暗示や,薬物投与の実行に伴ういろいろな精神的影響である。このことは案外忘れられがちで,とかく薬物を過信すると,このαを忘れて薬物の作用だけに移ろうとする。したがってどうしても無理をする。
このαを利用すると,薬物の効果は増強され,したがって薬物の量を節減することができるから副作用も少なくなる。老練な医師や手馴れたナースと新米さんとのちがいがここに出てくる。病院ではナースが薬物の投与の実際に当たるから,ナースの言動はとりわけ薬理作用に大きく影響する。薬物の効果をあげるために暗示を利用することは,臨床薬理学の実行における一つのこつである。機械的に薬を配るだけのことならば素人でもできる。
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