看護□社会学
集団と個人
杉 政孝
1
1立教大学社会学科
pp.70-71
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912737
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病院を,各種の職種集団の複雑な統合体と考えれば,看護婦はそのなかで制度的に明示された看護という役割の担当者として,一定の権限と義務の枠内で活動するように期待されている。しかもそれが,一般企業体の場合とは違って,病院組織の利潤の増大のためというよりも,むしろ,患者へのサービスのためという名分のもとに期待されているだけに,看護婦たるものは,私的な欲求や希望はある程度抑えてでも,患者のためという至上目的に基づく病院組織からの期待にできる限りそうように行動することが当然とされてきた。
しかし,人間と集団との関係は逆の角度から考えてみることも必要である。上に述べたように,集団や組織がその存続のために個人の参加を期待して,ある場合には個人の自由を拘束することもあるのは事実であるが,それとひきかえに,集団や組織はメンバーである個人に対して,その役割遂行に対する報酬という形で,個人の私的な欲求の充足を助ける。だから,個人と集団との関係はもちつもたれつの相互的なものであり,一方からのサービスしか考えられないとしたら,その関係はどこかに無理か矛盾があるだろう。
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