特集 看護婦の勤務と生活の合理化
第4部 生活を豊かにするために
手紙の書きかた扱いかた
古屋 かのえ
1
1国立東京第一病院付属高等看護学院
pp.165-167
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912573
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手紙は簡明,直截なのがいい
「一筆啓上,火の用心,おせん泣かすな,馬肥やせ」—まず火の元に注意して火事を出さぬように,愛娘おせんを可愛がつて仕合わせに育てるように,馬には飼料をやつて肥やしておくように—陣中の武士(徳川家康の配下,本多作左衛門)が留守宅の妻に送つたこの20字に足らぬ短い手紙……何と素晴しい! この何の虚飾もない簡明,直截な手紙の中には,誠意と親愛の情までが一ぱいである。私もこういう手紙を書きたい,貰いたいと思うのである。しかし,この手紙にはこの手紙の通用する世界と人間関係がある,ということもまた忘れては困るのである。
たとえばあまり親しい間柄でもない人に止むを得ず縁談や就職に関する依頼をしたり,借金の無心をしたりするような場合に,「一筆啓上,嫁の件,オカチメンコ無用,真平御免」などと作左衛門式にやつたらどういうことになるであろう。手紙は簡明直截がいいとは言いながら,やはり実際には婉曲に諄々と事情を述べなければならない場合もあるのである。
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