講座
近視と乱視
大塚 任
1
1東京医科歯科大学
pp.15-18
発行日 1953年11月15日
Published Date 1953/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912487
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正視では遠方から来る光が眼の角膜や水晶体等で屈折されて,恰度網膜で像を結ぶようになつて居りますが,近視では遠方から,また光が網膜の前方の硝子体の中で像を結ぶ爲網膜ではピントがぼけて,眼は外の物を,はつきり見ることができません。それでも近視が輕い場合は,眼鏡をかけることにより,遠近共に不自由なく見えますが,その度が進んでくると,眼底に変化が起り,視力が衰え,眼鏡をかけても正常の視力には達しません。又時には網膜が剥離して失明することすらあります。近視は大抵10歳前後に始まつて,17〜18歳頃最も強く進み,25〜26歳位で停止します。
我国では近視は大正の初頃から昭和12〜13年頃迄年々著しく増加し,一時は小学校で20%,中学校で30〜40%,大学では60%位の近視がありました。しかし終戰後学校の勉強樣式が変つた為か,近視は文部省統計では著しく減つて,昭和26年には,小学校約8%,中学10%,高校13%大学23%となつて居り,私が一昨年横浜の中学を正確に検査した所でも約20%で,少くとも10%は少くなつていると考えられました。尚興味ある事は,終戰後は女生徒の方が男生徒より近視の多いことでありましてこれは女生徒が女としての負担以外に,男生徒と同じ学課をやつているという過重にあるものと考えられます。
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