精神身体医学講座・8
心身症の治療(1)
前田 重治
1
1九州大学医学部心療内科
pp.48-51
発行日 1964年12月1日
Published Date 1964/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912467
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
精神療法と薬物治療
心身症の治療を大別すると,精神療法と,薬物その他による身体的な治療とに分けられます。精神療法には,(1)積極的に説得や再教育,暗示などを与えて支持したり,訓練したりしてゆく方法と(2)抑圧され,うっ積している情動を自由に発散させたり,病気の背後にひそんでいる原因を探求してゆき,性格を建て直すようにしむけてゆく方法などがあります。(1)は,治療者の側の働きかけによって患者を支持し,適応力を強めてやるという意味から,「おおう方法」とよばれ,(2)は,心のもつれとなっている問題を,患者中心に探求して除いてゆくという意味から,「おおいをとる方法」とよばれることもあります。一方,このような精神療法と併行して,精神治療薬(リビリウム,プロクロールペラジン,クロールプロマジンなど)や,一般の薬物など身体的な治療が用いられます(第1表)。
さきに心身症とは,「心理的なとりあつかいが重要な意義をもつ身体疾患」であるとのべてきました。それでその治療には,精神療法を行ないさえすれば片づいてしまうと考えられがちです。たしかに治療の過程で,ある時期には心理的な面に力をいれて治療をすすめることがあります。しかしある時期には,身体的な治療を中心に治療してゆくこともあります。いずれにしても,心身両面から病気をたえず多角的に,統合的に考えてみてゆくという立場を失なわないことが大切です。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.