想園
壺井栄先生へのお返事
宮本 郁子
pp.68-69
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912444
- 有料閲覧
- 文献概要
9月号の先生からの「看護婦さんへの手紙」を拝読させていただいて感ずるものがありましたので,お返事のつもりで,ペンをとらせていただきます。
先生には,お身内の方が,癌で入院された折,その方が,看護婦さんにあたりちらすのをみて,たいへん恐縮なさって,おわびを申されていらっしゃいますが,私たち看護婦はいやしくも,死期の近い重病人のわがままには決して腹をたてたりはいたしません。否むしろ,御病人の苦痛をとりさってあげることも,完全治癒をさせて上げることもできないもどかしさを,恥ずるものです。ですから,せめてそのわがままをゆるし,したいことをさせ少しでも御病人のうつうつとした気分をはらしてさし上げたいとつい感傷的にさえなり勝ちです。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.