連載 新・ナイチンゲール伝・4
誤解されてきたその思想と人間
吉岡 修一郎
1
1久留米大学
pp.48-49
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912298
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5.魅せられた魂
ナイチンゲールの魂の中には悪魔が住んでいました。学問や芸術に一生をささげる不テイな天才どもと同じように,もの心がついたころにはすでに.心の中に悪魔をかかえ込んでいたのです。だが彼女の場合,その悪魔の声は同時に神の声でもあったのです。
デルビシアの田舎と,ハンプシアのニュー・フォレストとの二か所に,大きい邸宅を持ち,ロンドンの社交シーズンのためにはまた,一流街のメイフェアにいくつかの部屋も持っている。大陸への旅行は,イタリア・オペラの回数とパリの名士たちとの交際の回数よりも,頻繁に出かける。読書などにはもちろんこと欠かない。そのような不自由のない家庭に育って青春を迎え,適当な回数のダンス・パーティとディナ・パーティとを経て,知り合った良家の青年たちの中から,ふさわしい1人をえらんで結婚する。結婚後も同じように生活を楽しみ,生活の義務をはたして,最後は神に召されて行く。
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