特集 昭和39年日本看護協会総会
<看護セミナー>人間としての患者
岡 宏子
1
1聖心女子大学
pp.18-24
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912293
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果して患者はワガママか
一般的に,患者心理といいますと,患者というのは病人だから,ふつうではないから,非常に不安があるし,神経質になるし,そうしてイライラするのが当たり前だ。ワガママになっても子どもと思え,などというふうに,みなさんは,患者の心理について,いろいろきいているだろうと思うのです。しかし,いちど患者の体験を経た後では,ただ“看護婦さんは天使のごとく”では問題は片づかないと思うようになりました。もちろん,私の方で受けた看護婦さんの印象は,満点だったわけですが,患者の方から見た看護婦さんというのは,かならずしも“ニッコリした天使”とは限らないのです。
ある患者さんで具体的に文句をいう方は,看護婦さんが忙しいことも,手が足りないということもわかっている。だけれども,ちょっと思いやりがないんじゃないかという。便器を足でツーッと押しのけていっちゃうというのです。両手がふさがっているから,便器をあそこからあそこへやるのに,手でやらなければならないという規則はない。仕事の合理化の上においては,手で何かをやって,足で何かをやるということは,場合によっては,忙しい時にはじつに便利なことがある。ところがあれがショックだという人が出て来るかと思えば,看護婦さんは,忙しいのかどうか知らないが,いかがですかというが,後の顔つきはとりつく島がないんだというのです。
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