想園
基準看護を考える
新井 とよ子
1
1国立世田谷病院
pp.70-71
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912154
- 有料閲覧
- 文献概要
中学2年になる私のいとこが脊椎腫瘍で都内の某大学病院に入院している。郷里の大学病院に入院していたが,そこでは手術困難だというので絶体安静のまま群馬の田舎から上京,入院した。家族,親類あげての大仕事であった。今は手術の結果も良好でギブスベットに仰臥している。4〜5日前の夕方,私が行くと氷枕,氷のうをして手首に包帯をまいていた。発熱した事はわかったが手首の包帯が不審なので尋ねると「看護婦さんが氷のうを手でおさえていて,というからおさえていたら午後になって手首がはれてしまった」という。私は唖然とした。氷のうを,つる時間もないのだろうかと。
仰臥した胸の上にお膳をのせて食べている患者は見慣れている私だが肉親となるとまた,別である。「看護婦さんは忙しそうで用事を頼むこともできない」といとこはいった。この病院は,もちろん基準看護だから付き添いはいけない。いけなくなくても,ベットサイドがせまくて付き添い人のいる余地はない。基準看護とは,完全看護とは,ベット数をふやすためだけの方便かといいたくなる。患者の身の回りの整頓に毎日,群馬から上京することはできない。といって宿屋に泊って基準看護の病院に通うというのもおかしなものである。こういった場合,特別例はみとめられぬものだろうか。患者を少し広い室に移し,付き添いを許可してもらうのである。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.