医学講座
救急患者の看護
藤田 五郎
1
1自衛隊中央病院
pp.52-55
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912018
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1.救急処置の意味するもの
救急処置(First Aid)とか応急治療(Emergency Medical Treatment)とかいえば,何か一時の間に合わせの処置とか治療であって,定型的な医療にくらべると劣った類に属するものと考えがちである。しかしながら,よく考えてみれば,文字どおりFirst Aidである最初の処置が適切なものでなかったとすると,その患者には“Second Aid”もなければ定型的医療も行なわれないわけであって,いわば治療のスタートという重大な意味をもっているとも考えてよいと思う。ある場合にはもちろん患者の生死の分岐点になることもある。そのほか,それに引き続いて施される治療がどれほどの効果を現わすかどうかという問題のほか,さらに後遺症や機能障害の程度という事柄にも大きい影響をおよぼすものである。
このことは,必ずしも屋外でおこる災害外傷とか,溺水,中毒などに限られたものではなくて,病棟勤務中のナースとか手術介補中のナースにあっても種々の患者の病状の急変とか偶発症状がおこった場合についていえることであると思う。第1図のシェーマにもあるように,外傷だけでなく急性の疾病についても同じであるけれども,受傷や発病から転帰までの段階においてとられる処置はそれぞれ重要な意味をもっているものであって,それぞれのステップにおける取り扱い,看護というものが患者の予後を左右するものである。
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