特別寄稿
小児病棟における保母の役割(2)
坂本 竜生
1
,
江口 とみ子
1
1九州厚生年金病院臨床心理室
pp.44-45
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911904
- 有料閲覧
- 文献概要
4.調査結果から見た小児病棟管理上の問題
入院20日〜1か月ごるから,退院後の再適応に影響をもつような行動上の変化があらわれやすくなるのではないかという,われわれの調査結果は,とくに入院が長期化する場合,それらの影響のよい面をどのようにのばし,悪い面をどんな具合に防ぐかという具体的方法の必要性を痛感させるものである。小児病棟で医師や看護婦とは自ら異なった立場で,保母が必要な理由もそこにある。以下,小児病棟での役割についてまとめてみよう。
(1)心理治療者としての保母の役割
まず保母には,医師と看護婦との間に介在する心理治療者としての役割が強く要請される。さきの結果にも見られるように,退院後児童が一時的に粗暴になったり,退行行動を示したりするような心理的不安の起伏に対して,保母はじゆうぶん目を向けて,つねにその緊張の解消をはからねばならない。時としては代理母(substitute mother)の役割が要求されようし,時にはまた兄弟感情が代行されねばならぬかもしれない。しかし,それらが児童にとって,単なる代償的満足にしか過ぎないものであるとしたら保母の存在は無意味である。むしろ積極的な治療機能を果たすために,個々の児童のパーソナリティの背景と,病院生活で生じるであろうその子の変化との問の予測に立って,病棟における小児の治療計画が立てられねばならない。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.