特集 妊娠中毒症を整理する
晩期妊娠中毒症の検査法
住吉 好雄
1
1横浜市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.523-527
発行日 1980年8月25日
Published Date 1980/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205744
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1.はじめに
晩期妊娠中毒症は高血圧,蛋白尿,浮腫を主徴とする疾患群で,本症による母児障害は著しいものがあり,母子衛生の面からきわめて重要な疾患とされている。治療医学の進歩と相まって,近年における妊婦の保健衛生思想の向上により重篤なものの発症は著しく減少し,本症による母体死亡に遭遇することはほとんどなくなった。しかしながら本症の後遺症は依然として跡をたたず,また本症に起因する児死亡は相変わらず周産期死亡の第1の原因となされており,無視できぬ重要な妊娠合併症である。本症は学説の疾患とさえいわれ,その発生原因については多数の研究,見解があるが,その根本は,全身の細小動脈の収縮による末梢血管抵抗の増大と,腎を介しての水・電解質の過剰蓄積にあると考えることができる。したがって本症の検査法も表1に示すごとく,末梢血管に関する諸検査,および腎に関する諸検査が主体となり,その結果発生して来る胎盤機能不全の検査,胎児発育状況の検査,その他血液一般の諸検査が一般に行われている。そこで今回はこれらの検査のうち,臨床上比較的よく行われている検査に限って述べることにする。
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