予防接種の話
ジフテリアの看護
菅野 浜子
1
1都立荏原病院
pp.57-59
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911477
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ジフテリアはジフテリア菌の感染によつておこる呼吸器系伝染病の一つで,口部気道に偽膜の形成と菌の分泌する毒素によつて全身症状を来す急性伝染病です。この菌は寒冷及び乾燥に対しては抵抗が強く季節的には冬に多く,2〜7歳の小児がおかされますが,最近の傾向としては7〜9歳の年長児の罹患率も目立つてきております。
感染経路は侵入門戸が呼吸器系であるため,鼻腔,咽頭,喉頭粘膜に病巣をつくりますが,時には眼瞼結膜のほかに腔あるいは皮膚にジフテリア性偽膜を作ることもあります。ですからその感染は患者または保菌者の咳嗽,くしやみの際の飛沫,喀疾,鼻汁,唾液による場合と,患者によつて汚染された食器,衣類,布片,玩具などに附着した菌が飛散し,それを吸入しておこることもあるわけです。ジフテリアは症状により咽頭ジフテリア,鼻腔ジフテリア,喉頭ジフテリアの3種にわけられております。軽症の場合には限局した局所感染で中毒症状もなく軽快することもありますが,重症になりますと,中毒症状も著明となり,咽頭ジフテリアに続発して鼻腔ジフテリアまたは喉頭ジフテリアの症状を同時に併発することもあります。殊に悪性ジフテリア即らエソ性のジフテリアになりますと,口臭,扁桃エソ,リンパ浮腫の症状が目立ち,意識は最後まではっきりしておりますが,脱力状態になり,出血性素因をともない激しい経過をとります場合は4〜5病日で死の転帰をとることすらあります。
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