特集 最新の予防接種
各論
ジフテリア
黒川 正身
1
1国立予防衛生研究所
pp.31-39
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201647
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まえがき
日本のジフテリア罹患率は大平洋戦争の末期に急激に増加して人口10万につき100人以上に達したが,戦後は急傾斜を画いて減少し,1953年には終戦時のピークの10分の1以下に下つてしまつた。
然し,その当時,東京及びその近傍の各所で行われた調査を綜合してみると32),各年令層を通じてSchick陽性率が意外に高く,また,ジフテリア予防接種の普及率も案外に低いものだと考えざるをえなかつた。このことは,戦後のジフテリアの減少が,必らずしも予防接種の効果のみによつておきたものだとはいえないこと,何か不明の他の因子も考える必要があること,そして,上記のようなジフテリア患者の著るしい減少が,吾々の統制外にある条件の介在によつておきているものであるならば,このような条件は何かの原因で変動することも当然予想されることであり,その場合には,ジフテリアに感受性のある人は多いのだから,再び患者が多発するという事態が生ずるであろうということも予想されること32)ではあつた。
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