ナースの作文
進学コースをめざす友へ
M子
pp.21
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911423
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祥子さん
お便りありがとうございました。張切つて働いているあなたの姿が目に浮かんでまいります。大変長いこと失礼して,ごめんなさい。冷たかつた夜風もぬるみ,夜の通学もいくらかは楽になつたでしよう。あなたのおたずねになつてらした進学コースの高等看護学院のこと,私が感じるところだけ御返事致しますね。
しかし,人生街道は一本ではありませんし,結局,結論としては自分ではつきりした目的を掴んで判断すること。あなたも御存知のように去年の今ごろ私もずいぶん悩みました。テストにパスできるか否かも心配でしたが,あなたともいろいろ話し合つたように,第一に給料がもらえず,消費のみの生活が2年間続くこと。その次は凡人で一人の女である私は結婚のことでした。卒業したら23歳になつていること,そして卒業後どれだけ勤務することができるか。教育は投資ではないとは思いますが,どうしても天秤にかけたがつたものです。第三に折角4年生になつた高校を卒業することができないということね。1年遅れることは本当に重大のことに思えましたものね。ささやかな女の幸福も失いたくありませんでしたね。でも今考えてみると,その当時看護ということに対して本当に正しい意力をもつていただろうかということですの。看護婦という職業の意味するものを持つていたなら,小さいことで迷わなかつたようですね。
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