随想
のぞき見の看護
日比野 路子
1,2
1白梅短大
2都立保母学院
pp.70-72
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911246
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保母教育の一端である看護学を担当し始めて,かれこれ10年を越える。そして病院実習に生徒達を送り出してから6年経つた。
実習を伴わない看護学は,無意味だと口癖のようにいつていた私の願いがかなつた訳である。都内の病院の小児科にそれぞれ1週間の実習に行けるようになつた,生徒達には学院から白い実習衣までも買つてもらえた。名札を胸に,三角巾で頭をつつみ,キリリとした姿で実習している生徒達を見て,たくさんの収獲を得るようにと祈らずにはいられなかつた。そして,その収獲は,細かい文字で紙一杯に綴られた感想文として,提出されるのである。私は毎年,この感想文を読んでは,若い学生の純な,そして鋭い言葉に打たれてきた。そして今年もまた生徒の感想文を読みながら,この言葉を,私個人がただ読んでいるということに疑問を持つた。この若い保母学生たちの言葉を多くの看護婦の方々に読んでいただいたらどうだろうか?そして読んでもらうべきだと思いいたつた。若い学生達の目にうつった看護,そして医師や看護婦さんたち,病気の子供たち,病院の設備などについて,それをありのままに感じ,字にし言葉に綴つた感想文が,一つのよい刺激として,プレゼントできたら……と考えたのである。これらの言葉の中には,痛い言葉,不愉快な言葉も交つている。けれども私共が現実を直視したなら,その痛い,苦い言葉を飲み込まねばならないことを知る。
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