講座
生理休暇の医学的考察
竹内 繁喜
1
1東京都立築地産院
pp.17-21
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910938
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Ⅰ.まえがき
この春機会を得て,産院勤務の医師3名と助産婦2名とで会津磐梯山に登つた。裏磐梯から頂上を極めて猪苗代の方に降りたのであるが,2,000米足らずの山なのにかかわらず,下山の急坂で男の連中は相当へたばつて了つた。所が,年齢的に若いというのではなく,山登りの経験があるというのでもない助産婦の方が全く平気であつた。「君達疲れないのかい?」との質問に,「冬の産院の忙がしい時の勤務に比べたら,この方が先生ずつと楽です」と答えたものである。産院が超満員で,夜など少ない勤務の助産婦が,ひつきりなしの分娩に,一晩中駆けまわつている事実を知つている私だが,この返事には相当考えさせるものがあつた。実態を知らない人々は「何と大げさなことをいつているんだろう」と考えるだろうが,読者の皆さんは恐らく同感でしよう。同時に私達は,医療保健事業関係の職業婦人ばかりでなく,あらゆる分野で婦人が過分の労働を余儀なくされる場合があることに思いを致さねばならない。この事は勿論男子の場合にもいえることで,これは現在の日本の経済面と照し合わせて急に打開される問題でもないが,この際改めて婦人の勤労問題を取り上げて見ることにした。ことに,従来とかく問題の中心となつている生理休暇を医学的な見地から再検討して見たいと思う。
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