扉
言葉と感情
pp.1
発行日 1959年9月15日
Published Date 1959/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910917
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自分の意志をあらわすためにはものを言わなくてはならない。ものを言うためには言葉を使う必要がある。動物の社会にもやつぱり彼らなりに通じ合う言葉ももののいい方もあるにそういない。その証拠には,たとえば犬などでも,とても悲しそうにクンクンとなく時と,ひどく怒つてウオン・ウオンとほえることがあるのでもわかる。小鳥でもそうで,ピイピイと,のどかに平和な声で歌つているかと思えば,けたたましくさえずることだつてあるのだ。
万物の創造主,神様が最も精巧におつくりになつた人間であると,怒つた時も,悲しい時も動物のように卒直にその感情をあらわしてものを言つたり,言葉を使いわけたりしないで,あたかもそうでないかの如くに装つてものを言うことがある。感情をセーブすることができる位,高尚な頭悩をもちあわせているためなのであろう。人間が,いつもこういう状態でものを言つたり,話し合つたりしている分では,表面は至極おだやかで,平和で,みにくい争いごともおこらないであろうけれども,神様は人間に,頭悩と一緒に感情も豊かに授けてつくつて下さつたので,人によつては理性よりも感情の方が強く作用する人と,理性で感情をころすことのできる人とがある。
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