西洋及び東洋美術の影響

　日本の古代の絵画には特記すべきなにものもなく，平安時代に至つてはじめて，中国の模倣から脱した日本独自の貴族的な芸術が現れるのである。

　彫刻と絵画に非凡の腕を振るつて芸術家の名乗りをあげたのが，空海。彼は最澄とともに学殖豊かな僧侶で，このことは日本の絵画の生い立ちが仏教の影響をこうむつていることを物語る。特記すべき人物に巨勢金岡（こせのかなおか）があるが，彼ははじめて，朝鮮及び支那から渡つてきた作品の単なる模倣から脱却して，独自の芸術を礎いた。