——
「看護学雑誌」12年の歩み
長谷川 泉
,
金原 一郎
pp.26-28
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910578
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
うすよごれた世相をよそに誕生
「看護学雑誌」は今年で創刊以来12年になる。通巻を以て数えれば,本号は136号に当る。思えば,はるばる来たものである。過去をふりかえり,過去にこだわるのは,既に前途に希望のなくなつた者の繰り言であるといわれる。だが,そのことは「看護学雑誌」の場合には当てはまらない。「看護学雑誌」は,これを契機に更に大きな飛躍を期そうとしているからである。徒に過去に恋々たることはとらない。だが,「看護学雑誌」の歴史をふりかえることは,日本看護界の歩みをふりかえり,その道標を辿ることによつて,今後の方向をはつきりと見きわめようとする作業であることを痛感する。その意昧で,この回顧の記事は読んで欲しいと思う。
年輩の婦長さんに会うと,「看護学雑誌を,創刊号から保存していますよ」と言われる。創刊の頃は印刷もうすぎたなくザラ紙である。立派たアート紙の口絵が入り,A5判からB5判に脱皮した今日の「看護学雑誌」のスマートな姿から見ると隔世の感がある。だが,戦後のスタートの頃は「看護学雑誌」だけでなく,皆ザラ紙のようなうすよごれた文化の状態であつたのだ。日本という国自体がうすよごれていたわけだ。かつぎ屋が横行し,汽車には窓から乗り,代用食のスイトンで腹を満たしていた時代なのだ。その当時のエンゲル系数かど,考えてみただけでもわびしくなるような時代であつたのだ。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.